口語訳:ISO14001
用語 3.5 環境


【ちょっとだけ上級な解説】
 ISO14001に書いてある「環境」の定義を全部直訳すると、
  「会社の活動をとりまくもの。例えば 大気、水、土壌、天然資源、植物相、動物相、人などの相互関係を含む。」と書いてあります。
  というわけで、口語訳では難しいことを全部省いて「会社とその活動をとりまいているもの。地球環境や自然環境の他に、『人』も環境に含まれると考えて下さい。」と表現しています。

 ところで、日本規格協会の翻訳(JIS Q 14001)には、「大気、水、土地、天然資源、植物、動物、人およびそれらの相互関係を含む、組織の活動をとりまくもの」と書いてあります。

 ここで『動物相、植物相』という言葉が問題になります。原文(英語)では、”fulora、fauna”と言います。あんまり一般には馴染みのない、やや学術的な言葉です。Microsoft Officeについてくる辞書にも、和英には載っていますが国語辞典には載っていません。そのため規格協会の翻訳者は、自分に馴染みのある「動物、植物」と勝手に訳してしまったのでしょう(どんな英和辞書にも、そんな訳は載っていません)。

 『動物相、植物相』というのは、そこにどんな種類の動植物が、どんな数の割合で、どんな相互バランスをとりながら生息しているかという事です。一語で言い換えると「生態系」という事も出来ます。「動物、植物」とは言い換えられません。
 「三毛猫が一匹通りかかった」とか、「花が一輪咲いている」という事ではないのです。

  例えば、ブラックバスがため池に密放流されて、ゲンゴロウや希少なトンボが絶滅し、メダカもほとんど居なくなってしまったが、ブラックバスは数を増やし釣りファンは喜んでいる、という状況について考えてみて下さい。
 「動物」と言ってしまうと、ブラックバスが増えているんだからいいじゃないかという論が成り立ってしまいます。しかし、「動物相」は全く様変わりしてしまっていて、完全に破壊されてしまっているわけです。ですから、「動物」と言ったときと「動物相」と言った時では全然話が違ってきます。

 別の例で言えば、崖を切り開いて山に道を通したとします。
 切り開いた所は、そのままにしておくと崩れてしまいますから、モルタルなどで固めなければなりません。しかし傾斜に少し余裕のある場所は、「植物の種を蒔いて、植物の根で固まってもらおう。」という環境配慮(?)をする事が出来ます。それによって、水を自然に土に染み込ませることも出来ますし、モルタル寿命ごとに再工事しなくて済みます。しかしそんなところに蒔く種は、北米や豪州産の○○グラスという草や、ハンノキなどのやたらと育つのが早い木で、元々そこには生えていない草木になります。そうした場合、モルタルで固められるよりは「植物」が生えていて環境に良いですが、「植物相」は全く破壊されます。 もしかすると、タネが広がって周辺の「植物相」まで広範囲に変化させてしまうかもしれません。
 最近では、撒いた種が外来生物法の指定を受けたり、指定が取り沙汰されたりして騒ぎになる事が出てきました。

 「動物、植物」と「動物相、植物相」はそれくらい違う語なのに、日本規格協会は混同してしまい、日本での『環境』の理解を妨害する事になってしまっているのです。
 ちなみに”fulora、fauna(植物相、動物相)”は、14001の96年版では”植物、動物”と訳されていましたが、02年に発行されたISO19011(監査と監査員の規格)では正しく”動物相、植物相”と訳されているのです。しかし、14001:04ではまた元の誤訳に戻ってしまいました。日本規格協会の翻訳者は、関連規格の訳もあまりよく見ていない様です。

 【追補】「土地」と「土壌」も少々意味が違いますが、『動物相/植物相 → 動物/植物』の様に
  本質を変えるほどまでは違いません。



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